妊娠していた友人から「おなかの赤ちゃんが死産した」と報告を受けたら、友人になんて声をかけたらいいのでしょうか。

残念ながら、正解というものはありません。

できることといえば、深い悲しみの中にいる友人(母親)に寄り添って、しっかり話を聞くなど限られます。

赤ちゃんを死産した夫婦(特に母親)は、非常にデリケートになっており、極端な話「どんな励ましの言葉をかけても、マイナスにとらえる」ということはよくあります。

そこで今回、死産した友人との接し方について解説します。

死産・流産とは

死産とは  産まれる前に赤ちゃんが亡くなること  

死産とは、出産前(妊娠12週以後)に何らかの原因でお腹の中の赤ちゃんの心拍が止まることです。

流産も出生前に赤ちゃんの心拍が止まるということですが、流産は妊娠12週未満のことを指すのが一般的です。(厳密には早期流産)

妊娠初期は、胎児(赤ちゃん)側に、妊娠後期では、母体側に原因があると言われていますが、多くの場合、原因不明がほとんどだというのが現状です。

→絶対に原因を聞くべきではありません。

流産・死産したときの出産

 流産の場合、自然に外に出てくることを待つこともあります。また状況によっては、流産する前に麻酔を使用し処置をして赤ちゃんを取り出すこともあります。

死産の場合は、週数にもよりますが、多くの場合、陣痛を起こして通常と同じ出産します。

つまり、死産という場合は、麻酔を遣って手術というイメージではなく、痛みに耐えて通常の出産します。

しかも死産は、生まれてくる赤ちゃんは“泣かない”、本当に本当に辛く悲しい出産なのです。

死産した友人の心の動きを考える

赤ちゃんが死産した場合、心の変化が複雑になるので、自分自身で感情をコントロールできる人はほとんどいません。

以下は一般的に死産した人の感情です。

①突然の死

突然の死は赤ちゃんとの思い出を作る時間がありません。

妊娠中いろんな思いをはせながら過ごした時間にも関わらず、それが一気に消えていくのです。

②誕生と死が一緒に訪れる

また、寿命で亡くなる事とは違い、死産の場合は「赤ちゃんの誕生」と「死」が同時に訪れます。

「誕生」と同時に「死を迎え入れる」ということは、自分を「肯定する気持ち」と「否定する気持ち」で、激しい「愛着」と「喪失」に埋め尽くされます。

③理解者がいない

配偶者や親兄弟でも、死産した気持ちを理解が得られないことは、よくあることです。
身近な人ですら理解が得られないため、次第に自分の殻にこもってしまうということもあります。

友人(母親)は妊娠を通して赤ちゃんへの愛着を感じていたので、その思い出を誰かに伝えたい。

しかし周囲には伝えにくいということもあります。

キューブラー・ロスの死に対する受容過程について

少し小難しい話になりますが、友人の心の動きを考えたいと思います。

大切な人(赤ちゃん)を亡くした場合、精神科医のキューブラー・ロスの「死に対する受容過程」というものに沿って気持ちが変化していくといわれています。

第1段階:否認と孤立

 頭では理解しようとするが感情では死産したという事実を否認している状態です。

周囲(家族、友人、知人、医療関係者などその人に関わる全ての人)は、事実に基づいて考えを進めているために、周囲から距離をとり孤独感を感じ、孤立する。

また、周囲に気丈に振る舞っている場合などもこの段階です。

第2段階:怒り

「どうしてこんなことになったのか」

「自分は悪いことをしていないのにどうして自分だけがこんな辛い思いをしないといけないのか」

このような怒りの感情に囚われている状態です。

周囲の人に対して、「あなたはいいわねお子さんいて」、「あなたにはわからないわよ経験したことないからね」というような発言をするようなこともあります。

この根底には、どうして私がという、死に選ばれたことへの反発がある。

第3段階:取り引き

 神様や仏様に祈り、「私は赤ちゃんのためなら、なんでもするから」という、お願いと思う段階。

子どもが「いい子になるから○○して」や、大人でもなにか悪いことがあってもいいので、○○だけはうまくいってと願う気持ちです。

第4段階:抑うつ

 「事実は事実なんだ・・・」と回避できないことに絶望感の悲しみに覆われる段階。

頭で理解していた死が感情でも理解できるようになると同時に、虚無感に襲われる。

第5段階:受容

 死を静かに受け入れて心が穏やかになる。

 死が自然な流れであると受け入れるようになる。

このような感情は、上記の順番通りに気持ちが変化することもあれば、順番を飛び越したり、戻ったりすることも、あります。またその日その時によって気持ちが変化します。

死産した友人にどう接したらいいのか

死産した友人にどのように接したらいいのでしょうか。

悲しみには個人差があるため明確な答えはありませんが、以下を参考にしてみてください。

より良い接し方

  • ひたすら話を聞く。
  • 友人の話していることを否定しない。
  • 体調のことを気にかける

死産した母親は、情緒不安定の真っ只中です。自分の気持ちの整理がつかず、パニック状態だという前提で接しましょう。

死産した母親が、「悲しみの感情」が襲ってきたら、話を聞いてあげる、また泣けるようにそばにいてあげる、などの対応をするとよいでしょう。

また「怒りの感情」のときは、見守ってあげることで、感情を少しでも吐き出すことができるようにしてあげ、放っておかないことが大切です。

八つ当たりされても少し時間をおいて話しかけてください。(それでも怒りはぶつけてくることも多いです。それでも放っておかない)

何かを伝えるというより、「あなたがそばにいる」ということを、(死産した)友人に感じておいてもらうことが重要です。

なお、もし声をかけるとしたら、「大変だったね。私が力になれることがあったら遠慮なくいってね」などがよいでしょう。

友人(死産した母親)を傷つける例 

言って傷つくことは、絶対に避けましょう。

たとえ親切心であっても、相手を傷つけることがあるので、注意が必要です。

指示的な態度や言葉

 「早く元気になって」「泣かないで」など

気持ちに沿わない解釈

「そういう運命だった」「仕方のないこと」「今回は諦めて」「早いうちでよかった」

価値観の押し付け

「若いから大丈夫」「元気に生まれてくることが一番だよね」

否定や責める言葉

「〇〇したからこうなった」「いつまで泣いてるの」

グレーな励まし

特に死産してから日が浅い場合、耳障りがいいだけの言葉は友人の心には響かないので注意が必要です。

以下の発言は、良くも悪くも取られる言葉なので慎重に。

  • 「短い時間でも赤ちゃんはあなたに会うことを選んでやってきたんだよ」
  • 「この経験(死産したこと)には、きっと意味がある」
  • 「天国から赤ちゃんがあなたを見守ってくれるよ」

香典について

友人であれば香典は不要です。

その気持ちで十分です。(友人は嬉しいと思いません)

親族で香典を渡すのであれば「お見舞い」という名目で1万円前後包むとよいでしょう。

贈り物について

お花などを贈ろうと考える方もいますが、相手は求めていないということが多いです。

手紙もハードルが高いです。

贈り物は『すごく感謝される』か『無神経な人だと思われる』かどちらかに大きく分かれます。

友人へのあなたの気持ちはわかりますが「何もしない」ということも一つの選択肢です。

それよりも声をかけたり普段通り接すること、気にかけてくれることが一番うれしいものです。

贈り物をしない変わりに 友人が元気になったら、一緒にご飯に行くなどがよいでしょう。

死産した友人にあなたができること

死産後、情緒不安定であったとしても、いつか元気になれる日が来る日がきます。

その日までぜひ支えてあげてください。

死産を経験すると、ほとんどの人は自分を責めてしまうものです。

そんなときは「責めないで」と言わず、「責めちゃうよね。悲しいよね。何も言えなくてごめんね。」と受け入れてあげるとよいでしょう。

時には、ささいな発言で、あなたに「怒りの感情」をぶつけてくるかもしれません。

その時は、(「赤ちゃんの死」を受け入れている最中だと思い)

口論などせず「不用意なこといってごめんね」と、あなたが譲ってあげてください。

 

「死産を経験する」ということは、非常にストレスがかかった状態なので、気持ちが不安定になるものです。

 あなたのできることは、死産した友人に寄り添って、友人の気持ちを黙って聞いて、一緒に泣いてあげることです。

そして、赤ちゃんとの思い出も聞いてあげるとよいでしょう。
  

ただ、あなたがストレスになる程、気を使いすぎるのはよくありません。

あなたが無理しない、できる範囲で大丈夫です。

死産の悲しみから立ち直るまでの時間は、個人差はあります。

しかし、いつかきっと死産の悲しみを乗り越えることができます。

そのときは必ず感謝されます。そして、今以上に友情が深まることでしょう。