「妊婦健診で赤ちゃんの成長が止まっていた」

「何か変だと感じて病院を受診したら赤ちゃんの心臓が止まっていた」

医療が発達し、昔と比べて妊産婦死亡率も乳児死亡率も低くなりました。

ですが、今も残念ながらお腹の中で亡くなってしまう赤ちゃんが年間2万人ほどいるのが現実です。

赤ちゃんを亡くされたご家族は、突然のことに戸惑い悲しんでおられることと思います。

大変お辛い思いの中ですが、亡くなった赤ちゃんをこの世に送り出し見送ってあげるためにも、流れを押さえて心の準備をしておきましょう。

「死産の届出に関する規定」によると、「死産とは妊娠4ヶ月以後における死児の出産」とされています。つまり妊娠4ヶ月(=妊娠12週)以降が法律上では死産とされます。

死産となると母体にも負担がかかりますので、分娩も日帰りということもなく胎児を火葬する必要もあります。

ここでは死産における分娩についてまとめていきます。

死産も普通の出産と同じ

死産も陣痛をおこして出産をする

お腹の中で亡くなってしまった赤ちゃんは、おなかの中で吸収されたり、消えていなくなるというようなことはなく、放っておくと感染などの原因になってしまいます。

そのため、お腹の中から「赤ちゃん」と「胎盤」を出す必要があります。

基本的には子宮収縮薬を使用し人工的に陣痛をおこして経膣分娩で出産することになります。

これは普通の出産における誘発分娩と同じ流れです。

必要に応じて手術をする

上に述べたとおり基本的には経膣分娩となります。

しかし胎盤の位置や骨盤内の感染、出血などにより緊急に赤ちゃんをお腹から出す必要のある場合には、お母さんの身体を優先して緊急帝王切開となる可能性もあります。

なお経腟分娩か帝王切開かは、担当医が事前に説明の上、処置を行いますので、原則ご自身で判断できるというものではありません。

死産が判明してから分娩までの流れについて

死産が判明すると入院の日程が組まれ、分娩に臨むこととなります。

分娩の大まかな流れとしては、「子宮頸管拡張」「子宮収縮薬投与」「子宮内容遺残確認」です。

ひとつずつ説明していきます。

子宮頸管拡張 

分娩のため入院をすると、まずは子宮の入り口を広げるために前処置として器具を挿入します。

一般的にバルーンやラミナリアという器具が使用されることが多いようです。

だいたい一晩かけてゆっくりと子宮の入り口を広げていきます。

これを子宮頸管拡張(しきゅうけいかんかくちょう)といいます。

子宮収縮薬の投与

子宮の入り口が広がるといよいよ分娩の準備です。

子宮収縮薬を点滴投与して、人工的に陣痛を起こしていきます。最初は少量から開始し、数時間かけて少しずつ量を増やしていきます。

子宮収縮薬の量が増えるにつれ、陣痛の間隔が狭くなり痛みが強まってきます。

これは普通の出産と同じです。

痛みのないときはゆっくり深呼吸して呼吸を整え、痛みの波が来ているときは大きく息を吐き出して痛みを逃しましょう。

痛みの間隔が1分になるともうすぐです。

お母さんの力で赤ちゃんを子宮の外へ送り出してあげましょう。

赤ちゃんが出てきたら、続けて胎盤も身体の外へ晩出します。

中にはその日のうちに分娩とならないこともあります。

その場合はまた翌日以降に仕切り直しとなります。

子宮内容遺残確認

分娩が終わると、子宮内に胎盤などの残存物がないかエコーで確認していきます。

問題がなければ2時間ほど分娩台の上で過ごし、自室へ戻ります。

産後の身体の回復には時間がかかるため、数日は入院することになります。(週数や容態によります)

入院中は産科の病棟に入院する方が多いと思います。

中には新生児の泣き声が聞こえたり他のお母さんと顔を合わせることがあったりして、辛いお気持ちになることがあるかもしれません。

辛いお気持ちはひとりで我慢せず、病院のスタッフへ相談してみてください。

個室が開いていたら個室に(無料で)移動させてくれるといった配慮をしてくれる病院が多いです。

また、赤ちゃんをお見送りする前に、入院中に赤ちゃんと思い出を作る方法があります。

「赤ちゃんとの写真を撮る」「赤ちゃんの手形・足形をとる」「赤ちゃんをお風呂にいれてあげる(沐浴)」「赤ちゃんのへその緒や髪の毛を残す」等です。

すべての病院で対応していただけるわけではありませんが、赤ちゃんにしてあげたいこと、ご両親がやっておきたいことがあれば、病院・葬儀会社に相談してみましょう。

思い出は辛いという場合は無理に行う必要はありません。

ただ、病院のスタッフに気をつかって自分の気持ちを抑えるのはやめましょう。

あの時になにかしてあげればよかったと、後悔する方は少なくはありません。

火葬の必要性

妊娠12週以降の死産では墓地埋葬法の規定に従い、火葬をする必要があります。

まずは死産の届出が必要となります。

「医師または助産師の死産証書」または「死児検案書」を添えて、死産後7日以内に届出人(死産届を提出する人)の住民票のある市区町村、もしくは死産をした病院のある市区町村へ提出する必要があります。

赤ちゃん用の棺に家族の写真や手紙、ぬいぐるみなどを入れる場合には、入れるものの素材や大きさなどを火葬場の職員へ相談してください。

さいごに

大切にお腹の中で育ててきた赤ちゃんとの突然のお別れ。

身体も回復までに時間がかかりますし、精神的にも落ち込むことと思います。

悲しみの乗り越え方は人それぞれです。何よりも無理をせず、心身の回復を第一にして過ごしてくださいね。

死産や流産、人工妊娠中絶でも支給対象。出産一時金について