流産は非常に悲しいものです。

しかし流産は実は日常的に起こるものともいえ、その割合は、全妊娠の15%といわれています。

さらに、妊娠を経験した、女性の流産経験者は約40%というデータ(厚労省)があります。

当然、この数字は病院でわかっているだけの数字になりますので、実際にはもっと多く起こっていると想定できます。

また年齢も影響し、年齢が上がれば上がるほど、流産する確率も増えます。

流産は非常に悲しいことですが、けっして珍しいものではありません。

そこで本日は、流産の原因についてお伝えいたします。

流産の原因について

流産には大きく分けて2種類あります。

  1. 病気が原因の母体異常と
  2. 病気が原因ではなく、偶然におこる自然淘汰(自然選択)

母体異常

母体異常とは、母体の何らかの病気が原因で流産してしまうことをいいます。

その場合は原因を解明し、その症状にあわせた治療が必要になります。

代表的な症状として、ハセドウ病や橋本病などの「甲状腺疾患」や、血液をサラサラにする成分が不足する「プロテインS欠乏症」などが挙げられます。

ただ、母体異常が原因の流産は、確率的には高くないので、必要以上に心配することはないといえます。

染色体異常

受精卵や胎芽(たいが:妊娠8週以前の胎児)の染色体の異常により起こる流産のことをいいます。

流産のおよそ80%が、染色体異常が原因で流産するといわれています。

また、この染色体異常は、どんなに気を付けていたとしても、母体や病気など関係なく起こり、防ぎようがないものと言えます。

染色体異常について

染色体異常を持った胎芽は、生まれてくることができず、妊娠途中で、自然淘汰(自然選択)されることに起こります。

自然淘汰とは
簡単に言うと、生存競争に有利な環境に適応できる優秀な個体だけが生き残り他の個体は排除されることを意味します。

語弊を恐れず言うと、精子と卵子が受精することにより人間が形成されますが、すでに人間が形成される段階でも、自然の摂理通り、生存に有利な個体だけが残るという生存競争みたいなことが自然に行われます。

よって、精子や卵子に染色体の異常があった場合、自然淘汰(自然選択)がおこなわれ、人として生まれてくることができないのです。この自然淘汰されることが、妊娠判明後に起こったら、流産するということになります。

胎芽(妊娠8週以前の胎児) の染色体異常が原因で、自然淘汰されることは、誰にも止めることができないですし、残念ながら自然の摂理としかいいようがありません。

特に初期流産は、どんなに気を付けていたとしても、当然母親のせいではなく、流産してしまうときは、してしまうものなのです。

ただ、この自然淘汰は着床前から起こっていることなのです。

卵子と精子について

そもそも私たちがもっている、卵子の約25%、精子の約10%は、染色体異常といわれています。

卵子の染色体異常

女性は、多くの場合月に1回ペースで排卵が起こり、そのうち25%が、染色体異常があるといわれています。

それなのに、なぜ世の中に染色体異常のある子供が25%生まれてこないかというと、出生前までに自然淘汰されてしまうからです。

染色体異常のある胎芽や卵子が、自然淘汰することによって、生まれてくるまでに染色体異常の赤ちゃんは1%未満になります。

1.着床前の染色体異常  約25%

2.着床後の染色体異常  約10%

3.出生時   1%未満

もっと詳しく見ていくと、前提として卵子の4個に1個(25%)は染色体異常をもっています。

しかし、卵子が、着床をする前段階で、約25%が染色体異常だとしても、染色体異常のある卵子は、この段階でも自然淘汰されていき、着床できる卵子の染色体異常は10%になります。

この着床できた染色体異常の卵子(胎芽)が自然淘汰されることを流産と呼びます。

妊活をしていたけど「今周期も生理が来てしまった」と思うことはありますが、もちろん正常な卵子が着床しなかったということもありますが、染色体異常のもつ卵子が自然淘汰されたということもよくあります。

また、超音波検査による妊娠判定の前段階で、(妊娠検査薬が)陽性が出たにも関わらず、検査薬の反応のみで、受精卵が成長せずに流産(化学流産)することも、染色体異常により、自然淘汰されたということが言えます。

これは、卵子が原則1個しか排卵しない関係上、卵子に染色体異常があった場合は、胎芽の染色体異常にダイレクトにつながるといえます。

年齢が上がれば、妊娠リスクが高まる理由

女性の卵子は生まれた時から卵巣にあります。

そして、月一回、基本一個ずつ排卵します。例えば、35歳の女性が、排卵した場合、卵子の年齢も35年と、年齢と卵子は比例して年齢を重ねるという仕組みになっています。

このことにより、年齢が上がることにより染色体異常、つまり流産の確率は、上昇していくということになるのです。

逆に精子は、年齢とともに精子の老化が進むわけではなく、3か月ほどで常に新しく作られます。まったく加齢の影響を受けないのかというとそうではなく、精子を作る精巣が年齢を重ねれば重ねるほど、機能が低下していきますが、女性より年齢の影響を受けにくいといえます。

精子の染色体異常

精子も約10%染色体異常があるといわれています。

しかし、流産において、精子の染色体異常は受けにくいといわれています。

それは、精子は受精に至るまで、過酷な競争がまっているからです。

みなさんご存じの通り、数億個の精子が一回につき射精され、卵子に向かって泳いでいき、その中の生存競争を勝ち抜いた精子だけが受精できるという仕組みになっています。

精子側は、この競争に勝ったものだけが、受精することに成功し、競争に負けると自然淘汰されます。

つまり、競争に勝ち抜いた精子は、染色体異常のリスクが低いといえますので、結果として精子側は、流産につながる可能性は極めて低いのです。

しかし、体外受精に関しては、医師が元気な精子の選別をしますが、自然淘汰される機会が奪われるので、体外受精で流産した場合、精子側に全く原因がないとはいえないのも現実です。

そのため、体外受精の方が自然妊娠に比べ流産の確率があがることは否めません。

母体異常について

流産の原因の多くが染色体異常であることは理解されたかと思いますが、染色体異常以外の原因で起こるのが母体異常です。

母体異常の主な原因

・甲状腺疾患

甲状腺の機能が正常にコントロールされないことにより流産することを指します。甲状腺機能の低下や増大が、流産や不妊に影響します。

胎児は、細胞の代謝を担う甲状腺ホルモンの分泌ができませんので、母体の甲状腺ホルモンに依存します。そのため甲状腺機能の異常があると、流産の確率が上がるということになります。

一般的には、血液検査を行うことにより、甲状腺の状態がわかります。

また甲状腺疾患(機能異常)は流産だけではなく、排卵障害にも影響します。

・子宮形態異常

子宮の形が正常な(一般的な)形でない場合を子宮の形態異常と言われます。しかし、形態異常と言っても通常の子宮の形が、通常と違う人は、女性の5%いますので珍しいことではありません。実際に子宮奇形でも、普通に妊娠・出産できることが多いです。

子宮形態異常の中でも、双角子宮(子宮が2つに分かれている。ハート型でくびれているイメージ)や中隔子宮(子宮の形は正常だが、子宮内に壁がある)の場合は、注意が必要です。

双角子宮や中隔子宮だからといって、一概に流産の原因とは言えませんが、子宮奇形による下腹部の痛みを感じる方は、手術は検討する必要があるでしょう。

ただ、子宮形態異常は、流産の直接的な原因というよりも、12週以降に影響を及ぼす(不育の原因になる)ことが多いのも事実です。

・夫婦の染色体異常

卵子や精子の形成時や受精時に染色体異常を及ぼす、もしくは②両親のどちらかの生まれつき持った染色体の影響で、染色体の配列が通常と異なること(染色体転座)による流産です。

①の場合は偶然起こることによりますが、②の場合の、両親が生まれつき持った染色体の影響であっても、普段の生活にはなんら影響を及ぼさないので、ご自身が染色体異常をもっていることすら気づかないという特徴があります。

夫婦のどちらかが染色体異常であった場合、流産する可能性は通常より上がりますが、日本産婦人科医会の報告では、染色体異常と診断しても、およそ3人に2人は自然妊娠により出産できると報告されています。

なお、夫婦の染色体異常は、遺伝子検査(血液検査)で確認することができます。(妊娠中に同じように遺伝子検査を行い、子供の染色体を調べることを出生前診断といいます。)

その他、ホルモン異常、凝固異常、母体の高齢年齢などありますが、正直最初は、母体異常を疑うのではなく、自然淘汰による染色体異常を疑う方が自然だといえます。

検査をする

妊娠はするけれど2回以上の流産を経験した方や死産、早期新生児死亡の経験がある方を「不育症」と厚生労働省では定めています。

2回以上流産を経験している、もしくは12週以後に死産した場合を経験したことがある場合は検査を受けてもよいかと思います。

ただ、前提として検査をしても原因が判明しないということが半数を占めます。

原因が判明しない理由として、自然淘汰の影響で流産していたということはよくあります。

その場合は、母親(父親)に原因がないので、現実的になにも処置をしなくても自然に出産することは頻繁に起こります。

この不育症の検査は皮肉なもので、異常があった場合は、「嬉しいことではないけど、原因がわかってよかった。治療しよう」となりますが、異常が見つからなかった場合は、「異常が見つからず嬉しいけど、原因がわからないから、手の施しようがない」といった、どちらに転んでも素直に喜べない検査になります。

しかし、なにもできないことに対する、モヤモヤを解消したいと思うのであれば、現在は多くの不育の専門病院がありますので、一度受診してみることをおすすめします。

特に35歳以上の方や、妊娠前から生理がとても不順である方などは、検査する価値はありますので、検査をするとよいでしょう。

なお検査費用は、健康保険の適用外で3万円~20万円かかります。

おすすめ医院: 杉ウィメンズクリニック 

不育の検査においては国内最高峰だといえますが、予約がなかなかとれませんのでご注意ください。新横浜駅の近くですので、県外からも多くの方が受診されています。 

このほかにも、おすすめできるいい病院は沢山ありますので、評判だけでなく、治療をすることになった場合、病院により特長がありますので、それを考慮した上で選ぶとよいでしょう。(通いやすいも立派な理由です!)

さいごに

自然に起こるので悲しさが軽減される訳ではありませんが、両親には原因がなく、自然におこることが多いというが現実です。

無駄に検査をする必要性はありませんが、 12週以降の死産の経験した方は、原因がわかる可能性がありますので、 お金と時間があれば、早めに検査してみるのもよいでしょう。