死産を経験したのち、夫婦の絆が深まったという夫婦もいます。
しかし残念なことに、そのような夫婦はごく一部で、関係が悪化する夫婦の方が多いといえます。
それどころか最悪の場合「離婚を選択する」夫婦もいます。
ではなぜ、死産をきっかけに夫婦関係の変化は起きてしまうのでしょうか。
そこには、いろんな要因がありますが、夫婦の価値観の違いが浮き彫りになることが一番の原因といえます。
ここでは、死産を経験したのち、「夫婦関係が悪化し離婚してしまうのか」、また、離婚を迷っている方に対して「どう行動すべきか」についてお伝えしていきます。
死産した後、離婚を考える理由
死産した後は、夫婦の価値観が表面化する傾向にあります。
「価値観の違い」を感じ、「離婚」の二文字をよぎる夫婦は、決して少なくありません。
そこで、死産した後に離婚するきっかけとなりうる、この「夫婦の価値観の違い」を具体的に考えていきたいと思います。
1. 死産に対する男女のとらえ方の違い
死産という出来事は、男女の考え方の差が顕著に現れます。
女性は、赤ちゃんを身ごもった時点から「母」になります。
妊娠を知った時から、「気持ち」と「身体」に変化が起こり、生活すべてがおなかの赤ちゃん中心になります。
そして3~4か月も経てば、ほとんどの女性は「母」になるものです。
かたや
多くの男性は、赤ちゃんが誕生して初めて「父」の自覚を持つ傾向にあります。
もちろん男性も、赤ちゃんの名前やエコー写真などを見ることで、「父親になる」という意識は芽生えていきます。
しかし、男性は自分の体に変化が表れないため、どうしても妊娠中は、赤ちゃんのことを「自分ごと」としてとらえられない傾向にあります。
そうなると死産した場合、女性と男性で「死産に対する受け止め方」に差がでてきます。
小さな命を失ったことにより、
女性は「言葉にできない悲しみに襲われる」一方、
男性は、なんとなく「自分ごととして考えられない」「実感がない」
現実として、このようなすれ違いが起きます。
2. 男性は悲しみを忘れることが唯一の方法だと考える
死産した後、赤ちゃんのことを忘れることができる女性の方は、かなり少数派です。
もちろん、妊娠・出産のことを全て忘れたいと、無理やり自分の気持ちに蓋をしてしまう女性はいます。
ただ多くの女性は「死産したことに対する悲しみ」、「自分を責める気持ち」、「虚無感」に包まれています。
毎日泣いたり、他のことはなにも考えられなかったり、無気力になったり。
その状況を見て、夫は妻に対して、
「泣いてばかりいないで、もう忘れよう」
「(終わったことを)いつまでも、くよくよと引きずらないで元気出そう」
「運が悪かっただけ、仕方ないことだ。」
と、『赤ちゃんの存在を忘れる』ように諭す傾向にあります。
もちろん夫の言葉に悪意などは無くて、(悲しみのどん底にいる妻を見かねて)妻を慰めるため、元気にするための言葉として発しているだけです。
男性から見ると『妻思いの優しい夫だな』と感じるかもしれません。
しかし妻側からすると「優しい夫のする行動」とは思えません。
妻は赤ちゃんのことを忘れたい訳ではなく、夫婦で「赤ちゃんの存在を共有したい」のです。
それを理解しない夫に対し、妻は
「全く私の気持ちをわかってくれない」
「無神経な人と一緒にいれない」
という気持ちになってしまうのです。
これは一例ですが、このようなことは日常に起こっています。
3. 産前産後、女性はホルモンに支配される
よく言われてることですが「ホルモンバランスの乱れ」により、女性は精神的に不安定になります。
特に今まで気にならなかった夫の言動が、目につくようになったり、許せなくなってしまったり。
しかし、原因はホルモンの影響です。
女性は出産するために、妊娠したときから多くのホルモンが分泌されるようになります。そして、出産を機に役目を果たしたホルモンは一気に減少します。
つまり、このホルモンの乱高下(増加・減少)により、ほとんどの女性は、ホルモンバランスが乱れるという現象が起こります。
このように妊娠出産時に女性はホルモンに支配されるにも関わらず、多くの男性が、女性のホルモンバランスの乱れを理解していません。
それを考えると、死産後に「正常な精神状態を保つ」ことは不可能に近いでしょう。
ホルモンバランスの乱れについては、男性側がこのことを理解していれば、大きな問題に発展しません。(理解があれば、男性はきっと我慢してくれます)
しかし、男性が理解していないのであれば、妻が妊娠をきっかけに「人が変わった」と思い、すれ違いや喧嘩、憎しみ合いなどが起こってしまうのです。
(参考) 死産の原因を全て女性側のせいにする男性もいる現実
当然ですが、死産の原因はすべて女性にあるわけではないです。
しかし、ごく一部ですが『死産した原因』をすべて女性のせいにする男性もいます。
「女性の役割は元気な元気な子供を産むことだ」
「子供を産めない女性は役立たず」
と、残念ながら思っている男性もいるのも事実です。
時代錯誤で、理解しがたい考え方だと思いますが、
こうなると夫婦としての関係を再構築するのは、容易ではなでしょう。
それはそれで「イラっと」することもあると思いますが、離婚までには至らない傾向にあります。
離婚をしたいと思う原因について
離婚したいと思うのは、夫に対して「期待している」から
妻が夫に対するイライラする気持ちは(潜在的に)夫に対して期待しているからです。
自分の夫に対して「期待してなにがおかしい」という人もいるでしょう。しかし、すべてを夫に期待するのは酷な話です。
特に今の死産後に、妻に対する正しいケアを出来る夫は、ほぼ皆無です。
(夫が、医療従事者やカウンセラーであっても、あなたが納得できる対応をできるかどうか…)
よって残念な話ですが、過度に期待するのをやめる、もしくは、期待のハードルを下げるということが必要になります。
男女で脳の構造が違うものだと割り切りましょう。
「相手に期待しない」と意外と割り切れるものです。
夫(男性)は、脳の構造上「共感能力が低い生き物だ」といっそのこと割り切るとよいでしょう。
そして上手でなくても、あなたのことを思って話を聞いてくれたり、あなたのために行動してくれる夫に対して、大きな気持ちで見守るように接すると、夫婦関係は改善することがあります。
あなたが「全て気に入らない」病になってる可能性もある
ホルモンバランスの話で伝えましたが、そもそもあなた自身が「何を言われても(されても)気にくわない」ということもあります。
当然、妊娠・出産直後のため、「正常なメンタル」である方が、「異常」といえるのですが、
そもそも自分自身が「なにをされても受け入れらない」状態になっている可能性があるということは覚えておいた方がいいかもしれません。
現実に、普段から優しい夫に対しても、「離婚したい」という気持ちを持つ妻も多くいます。
価値観の違い
夫とは「価値観が違う」と嘆いている方もいらっしゃるでしょう。
死産経験後「こんなに苦しいのに全く理解してくれない」「夫とは、これからも一緒に暮らしていく自信がない」と思われる方も多いです。
これは前段でもお伝えした通り、その人の「性格」というより、要因が「男女の差」「脳の差」である可能性が高いです。
そんな夫は決して特別ではなく、一般的な「男性の思考」であると認識した方がいいでしょう。
死産後に離婚したいと考えたら
もし、あなたが離婚をしたい場合どうすればいいのでしょうか。
最初に知っておくべきこと
もしあなたが離婚したい場合は、『本当に離婚していいのか』よく考えましょう。
考える基準としては、いま目の前で起こってることが、今後も耐えられないかどうかです。
今は冷静に判断できないと思いますが、落ち着いた時に「どうしても許せない」ということになるのであれば 離婚という道も悪くないかと思います。
ただ、私が強く伝えたいことは今が離婚のタイミングではないということです。
決して離婚することは悪いことではありませんが、死産後、少なくとも1年は、様子をみても全くおそくありません。
特に「感情に任せた離婚」だけは、しないようにしましょう。
一度離婚をしてしまうと「覆水盆に返らず」というように、復縁はかなり大変です。
離婚したいと思っても、いま決断するべきではありません。
あなたは今、冷静な精神状態ではない可能性が高いということは覚えておきましょう。
なお死産を経験した後に、相手側から「死産したことだし、すぐ離婚してほしい」と言うような夫であるならば、むしろ喜んで離婚しましょう。(もちろん周到な準備をして)
死産という出来事が離婚の本当の理由かを考える
今の夫と一緒にいれないことは、死産をしたことが原因でしょうか。
死産後に離婚する夫婦に意外と多いことです。しかし離婚理由が、そもそも妊娠する前から夫婦関係が不和がある場合もあります。
「子供ができれば夫婦関係がよくなる」と期待して夫婦生活を過ごしていたパターンなどがこれに当てはまります。
離婚することを「死産のせいにする」のは 後々のメンタル的にも良くありません。
本当に離婚を考えてるのであれば、死産を直接的な理由と考えるのはあまりいい考えではないです。
離婚しないための方法
死産を経験したのち「夫婦で悲しみを乗り切った」という話を聞くことがあるかもしれません。
しかし、その言葉を鵜呑みにするのはやめましょう。
実際は、悲しみを乗り切った夫婦であるほど、たくさん喧嘩したり、時には罵倒しあったりしています。
そのことを前提に、離婚しないための方法を考えていきたいと思います。
コミュニケーションを密にとる
月並みですが、相手と腹を割って話すのが一番です。
男性と女性の脳は異なり考え方が全く違います。
また夫婦とは元は他人です。
もともと価値観が同じなはずがありません。その溝を埋めるのは、お互いことをきちんと話すコミュニケーションを十分にとるのが一番です。
相手を思いやり、相手の話を聞き、丁寧に自分の思っていることを伝えることが一番です。
もう今後は、相手に自分の気持ちを察してもらうということをやめましょう。
ただし、口論など夫婦喧嘩は増えますので覚悟は必要でしょう。
再度子作りにチャレンジする
もう一度子作りにチャレンジするということは、お互い共通の目標ができるので、あなたの悲しみも夫との関係も良好になる傾向にあります。
なお、再度子作りは死産の悲しみを和らげる方法として、とても効果的です。
可能であれば、トライするべきでしょう。
また、なかには、身体的な理由や年齢などで、もう一度トライするということができないこともあるでしょう。
その他にも、
「なんとなく不安」
「こんな悲しい思いをしたくない」(悲しい思いをさせたくない)
と、チャレンジを迷ってしまう場合もあると思います。
その場合、迷っていることも含め、夫婦でゆっくり話し合いをするべきです。
また夫婦で判断が難しいのであれば、不育症に強い産科など探し、夫婦一緒に専門医に相談するを聞きながら進めることをおすすめします。
なんにせよ、急いで全てを決める必要はありません。
「その決断で夫婦ともに納得する」ことに重きを置き決めていきましょう。
共通の趣味をもつ
昨今、子どもを作らない(作れない)夫婦はたくさんいます。
そんなときは、共通の趣味をもつとよいでしょう。
(いまは趣味を持つ気分ではないかもしれませんが。)
ドライブでも、ゲームでも、食べ歩き、動物を飼うでも、なんでもいいです。
夫婦一緒に楽しめるものを作りましょう。
それだけで、夫婦でいる満足度が高まる可能性は大いにあります。
妻の取説を読ませる
少し前ですが結構有名になった妻のトリセツ
脳科学者が男女の脳の違いについて研究したことをもとに書いてある本です。
そもそも男性と女性は脳のつくりコミュニケーションの方法などが根本的に違うということを書いてあります。
あなたが直接的にどんなに諭してもなかなか伝わらないことを本が代弁してくれます。
読んでもらうというハードルはありますが 自分がどういう気持ちかを理解してもらうためにも読んでもらいましょう。
この本で、夫婦関係が良好になったという話は本当によく聞きます!
なお、漫画版もあります!
最後に
感情に任せて離婚することだけは絶対にやめましょう。
もし、少しでも離婚したいにしても、急いで離婚をする必要はありません。
少なくとも、冷静になるまで待つべきです。
(少しでも早く離婚したのであれば、冷静になる日まで、へそくりを貯めるなど離婚の準備をするとよいです)
離婚したいと思っても、一歩踏みとどまり、あなたが本当にどうしたいのかをゆっくり考えましょう。
それからでも決断は遅くないです。
離婚は、何の解決にもならないことが多いです。
当サイト story編集長
夫婦で死産・流産を自身で経験したこと、また同じ体験をした方の取材を基に、少しでも役に立つ情報を発信しています。