厚生労働省の人口動態統計によると、2018年度の日本における死産人口は約2万人。
また女性のうち4人に1人は、流産・死産、出産直後の新生児の死亡などを経験するといわれています。
あなたも経験したのであれば、悲しみのあまり心を痛めていらっしゃることでしょう。
しかし、あっという間に時間が流れ、心の喪失感を抱えたまま 職場に復帰する日を迎えます。
「働く気分ではない・・・。」
「このまま退職、転職したい」
逆に「早く復帰したい」(気持ちが紛れそうなので)
職場復帰に対していろんな思いがあるでしょう。
どのパターンであっても、復帰の日がどんどん近づくと、不安な気持ちになるものです。
ここでは死産・流産後の「職場復帰が不安」と感じる方へ
事前に知っておいた方がよい知識をお伝えします。
職場復帰の準備編
無理しない
月並みな話ですが無理をしないようにしましょう。
今は精神的にも身体的にも、死産・流産という大きな出来事で心が疲れきっている時期です。
無理に動いたり、仕事をしたり、人と会うのも億劫になっているかと思います。
そんな時は「無理をしない」「したくないことはできるだけやらない」と、まずは自分にいいきかせておきましょう。
また、同僚・上司部下に対しては、
「わざわざ話題に触れない」
「話題にされても受け流す」
それだけでいいのです。
そして、あなたのことを理解してくれる人だけに、あなたのいま気持ちを打ち明ける。(無理に話す必要もないです)
また、仕事のことが気になるとは思いますが、
行きたくないなら休めばいい。
元気な人が代わりに働いてもらう。
そして、あなたが元気になった時に、いままで以上に頑張る。力を貸してくれた同僚にお返しする。
そんな気持ちで臨みましょう。
死産・流産後、「相談相手がいない」「誰にも気持ちを打ち明けられない」なら、SNSなどは有効な手段です。
身近に理解してくれる人がいるということは稀なことです。
SNS上であれば、同じ経験した人とつながることができます。
期待しない
よく経験談やブログを見ると、「周りの人が優しくて助かった」という内容に出くわすことがあります。
確かに多くの場合、周りの人はあなたに対し優しく接してくれることの方が多いでしょう。
・普段通り接してくれる
・何も聞いてこない
・体調を気にかけてくれる
「こんな簡単なことくらい出来て当然!! 」とツッコみたくなるかもしません。
しかし、相手が良かれと思い あなたに言った言葉が あなたを傷つけるかもしれません。
- 無神経な人
- (どう接していいかわからず)不用意なことを言う人
- 励ましのつもりで傷つけてくる人
このような人は一定数います。
また相手は「最大限あなたのことを理解しよう」としたとしても、どうしていいのかわからない場合もあります。
そうすると、あなたは「ああ、わかってもらえないんだ」と感じてしまうのです。
そこで、周りの人に期待するのはやめましょう。
冷たい言い方かもしれませんが、期待していなければ傷つくことが最小限になります。
「相手ができなくて当たり前」と思えますし、些細な気遣いでも感謝できます。
同僚や上司も初めての経験でどう接すればいいかわからないのが正直なところです。
ですので期待するのではなく、あなたに対して「普通に接してくれること」「配慮してくれること」に感謝しましょう。
相手に期待することをやめれば、周りの人のやさしさを感じることができ、ささいなことも「私のために、気遣ってくれているんだな」と思えれば、楽な気持ちになれます。
聞かれることに対して答えをもっておく
ここまでする必要があるかは人によります。
万全に備えておきたいという人におすすめなのが、質問されることを前提に返事を考えておくということです。
シュミレーションしておく!
言われることを想定していれば、精神的なダメージが最小限になります。
また言われたことに対して答えを用意しておけば、毎回落ち込むことが減るでしょう。
例
・・・想定通りだ。
デリカシーのないこと聞くよな。
でも、この人なりの「優しい(慰めの)言葉」だから、気にすることはない。
わたしには何の慰めにもならないのに。無難に対応しておくか。
体調がまだ優れないですが、
迷惑にならないようにがんばります。
…しかしながら、どんなに準備していても傷つきます。
ただ、準備するかしないかで「精神的な負荷」が変わりますのでぜひ準備してみましょう。
備えあれば憂いなしですよ!
自分のことを知っておく ー感情のコントロールー
死産を経験すると、亡くなった赤ちゃんを想い、湧き出る感情で心がいっぱいになります。
これを「喪失感」といいます。
それと同時に死産という現実に対して、この苦しい思いをなんとかしようと努力し、立ち直ろうとする思いが湧き起こります。
…このなんとも不安定な状態。
これが今のあなたの感情や身体の反応なのです。
この感情は「グリーフ」と呼ばれ、自分にとって大切な人を亡くされた多くの人が体験すると言われています。
さまざまな気持ちに揺れ動き、同僚とのコミュニケーションが負担になることが多いです。
また、子どもを亡くしたという共通の体験がなければ、気持ちを理解してもらえることは難しいかもしれません。
周囲の人たちがいくら優しい言葉、態度、思いやりを持った関わりをしてくれても、喪失感はなかなか癒されないものです。
しかし、それは自然なこと。
今は、その気持ちをゆっくりご自身で見守ってあげてください。
分かってもらおうとせず、適切な距離感を保ちながら関わることを大切にするとよいでしょう。
職場復帰をしたくない方へ
職場復帰を延期する
産後休暇
当然ですが、妊娠4ヶ月(妊娠85日)以降での死産・後期流産となった場合、産後休暇 8週間(56日)は適用されます。
仮に就業規則に記載がなくても、労働基準法65条で定められていますので職場に確認すべきです。
ただ原則、会社から給料が出ません。
しかし、無給の場合は、産休中は健康保険から「出産手当金」が支給されます。支給額は月給日額の3分の2相当額+社会保険料免除=約80%は受け取ることができます。
ですので、産休は必ずとり療養してください。
ただ、この56日はあっという間に過ぎてしまいます。
産休は当然の休暇なので、産休明けが一般的に「職場復帰」と言えます。
有給休暇
産休を取得しても職場復帰がすぐにできないという場合、有給日数が残っているようであれば有給休暇をとるとよいでしょう。
職場復帰は「産休後すぐ」もしくは「有給休暇を数日消化後」が理想です。
このタイミングが一番職場復帰しやすいタイミングなので、少し億劫だとしてもできるだけ頑張って復帰することをおすすめします。
また、復帰後に有給休暇がある方がよいので、有給休暇の日数を残した状態で復帰するのが理想です。
無理してまで、このタイミングに合わせる必要はありませんが、
日が経てばたつほど復帰づらくなるのも事実です。
傷病手当金
いまの精神状態では復職できないという方もいるかと思います。
その場合は、一度精神科を受診するとよいでしょう。
多くの場合は、心が回復するまで休んだ方がよいと診断書を書いてくれる場合があります。
診断書があれば、会社も休みやすいですし、健康保険の傷病手当金の対象になります。
おおよそ、月給の3分の2
しっかり心と身体の休養をとり、職場復帰しましょう。
なお「欠勤扱いになったとしても、ご自身の療養のために休みを取りたい」
「今までの仕事ができない」
「思うように体が動かない」
このような場合条件を満たしていれば、職場によっては傷病手当金の給付も可能かもしれません。
※医師の診断書が必要
加入している健康保険の「傷病手当金の支給条件」を確認してみましょう。
傷病手当金の受取り額は『月給のおよそ3分の2相当額』です。
なお傷病手当金の受給できる期間は(同一の傷病で)『最長1年6カ月間』支給されます。
◆流産の場合
妊娠4ヶ月未満の流産の場合は、有給休暇を利用し療養するのが一般的です。(出産手当金は対象となりません)
「流産はよくあるから」などと言われたとしても、あなたの心身のことはあなたしかわかりません。
必要な場合はゆっくりと療養しましょう。
「切迫流産」「切迫早産」などの理由や「心身の不調」の場合、
医師が労働できないと判断した場合は傷病手当金の対象になります。
経済的な心配があるから休めないという方は、「傷病手当金」を利用することで金銭的な面での心配事を軽減できます。
退職・転職したい方へ
結論をいうと、退職・転職は避けた方がよいでしょう。
なぜなら、あなたの精神状態が、正常な判断ができないことが多く、のちのち後悔することになる可能性が高いからです。
確かに退職すると、気持ちが整理されたと感じるものです。しかし、急に無職になり「これからどうしよう・・・」と精神的に不安定になったり、投げやりいになったりする人が多くいます。
「今後なにをするべきか」など悩みが増えると、余計にストレスがかかります。
特に経済的な面を心配される方は尚更です。
また転職も、転職活動や転職先など大きなストレスを抱えます。
事情があったとしても、今の仕事が好きでなくても、退職・転職したい場合は一度職場復帰してからでも遅くありません。
また次の子を考えている方も同じです。
不妊治療されているなどの理由で辞めて治療に専念したい方も、
経済的な観点や精神的な部分でも妊活を小休止するという意味でも、安易に辞めない方がいいでしょう。
仕事はその気になれば、すぐにでも辞めることができます。
退職を考えるなら、仮に無給であっても休職をすることをお勧めします。
*もちろん個人差はあります
最後に
悲しみが癒されないまま、職場復帰を迫られ、必死で過ごされていることでしょう。
職場復帰は簡単なことではありません。勇気のいることです。
それでも一歩踏み出してみましょう。
職場復帰は悪いことばかりではありません。
きっと大丈夫です。
ただ、決して無理をしないようにしましょう。