待望の妊娠は、とても喜びに満ちあふれ、大切な命を育みたいと思うものです。

しかし、母体や胎児の状態によっては、残念ながら人工死産を選択せざるを得ないケースもあります。

人工死産とは 

人工死産とは、母体内の胎児が生存しているのに、陣痛促進剤などの人工的な措置をすることで、死産に至ったことを指します。

妊娠中期(妊娠5ヵ月/16週〜7ヵ月/27週)にはいると妊娠は安定してきますが、母体の病気や胎児の異常から、人工的な死産の方法を用いなければならない、妊娠の継続を難しくする病気が見つかることがあります。

子供を望まないという方が多い12週未満の人工中絶(初期中絶)とは違い、人工死産は子供を産みたいという明確な意思のある方が、悩みぬいた上で「やむを得ず」選択することが多いという特徴があります。  

なお人工死産の期間は、妊娠12週以降22週未満。

現実的には、妊娠22週以降でも「妊娠を継続することにより母親の命の危険を脅かされる」と医師が判断した場合は、医療行為として妊娠を強制的に中断させる場合もあります。その場合は中絶ではなく死産とみなします。

もっと詳しく

流産ではなく「死産」と判断される妊娠週数は12週(妊娠第4月)以降の胎児が子宮内で亡くなった場合です。
そのうち人工死産は胎児を人工的な処置によって死産した場合の分娩のことで、自然死産と区別されます。
死産、人工死産は戸籍に残ることはありません。

人工死産を選択する理由

人工死産をする理由には、「母体のトラブル」「胎児の異常」が主な理由として挙げられます。

母体のトラブル

母体のトラブルから人工死産をする場合は、原因として破水や羊水が影響します。

妊娠初期の破水は、胎児の状態が未発達なため、産まれても生存するのは厳しくなります。

また、母体の羊水の量が過多あるいは過少どちらも、胎児の発育不全が生じます。

胎児の異常

胎児の異常とは、子供側の病気を示します。

胎児の異常の主な原因として、無脳症、胎児浮腫、水頭症などがあります。

また、妊娠中に母体から採血の検査をすると、胎児の染色体の異常を調べることができます。

それによりダウン症候群、13トリソミー、18トリソミーなどが確定ではないですが指標となります。

胎児に病気があると、出産後にも何らかの障害が出てきます。

母体のトラブルや胎児の病気などから発育不全や障害が起こり、出産後も発育発達に影響が出るため、人工死産への選択と至っています。

人工死産の流れ 

中絶手術(入院時)の流れ

中絶手術の入院期間は、医療機関によって異なり、1泊2日もしくは2泊3日の入院期間が一般的です。

今回は、1泊2日で入院する場合と、2泊3日で入院する場合の中絶手術の流れについて説明します。

<1泊2日の入院>

1泊2日の入院は、麻酔の注射をし、母体から胎児を取り出す手術の方法です。

入院日・手術前日

① 手術同意書の記載をし、提出します。
※同意書がないと、手術は受けられません。

② 感染症の有無を調べるため、採血を実施します。

③ 病気や現在飲んでいる薬などについて、手術に影響することについての聞き取りをします。
内服薬の内容によっては、医師の指示の基に服用を中止することもあります。

④手術開始の6~7時間以上前から絶飲絶食をします。
医師の指示のもとに、絶飲絶食を行って下さい。

入院2日目・手術当日

①手術衣に着替えます。

②全身の観察をするので、メイクやマニュキアは手術前に落としましょう。

③貴金属類は、感染防止のため装着できません。手術前に外しましょう。メガネやコンタクトレンズも外して下さい。

④手術の2時間前には、子宮の入り口を拡張するための医療器具(ラミナリア)を挿入します。痛みが出ることはありません。

⑤手術の麻酔は、注射により行います。麻酔の使用は意識がなくなるので、痛みなどの苦痛は感じません。

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手術の時間は、20分程度です。
麻酔が効いている間に、胎児を取り出します。

手術後麻酔から覚醒をして、異常が見られない場合は、退院可能となります。

まれに麻酔の影響で吐き気が出ますが、時間が経過すると消失します。

手術後は、麻酔の影響から安全を配慮し、自分で運転することは控えて下さい

<2泊3日の入院>

2泊3日の入院は、陣痛促進剤を使用し、人工的な陣痛からお産をし、胎児を取り出す方法です。

入院日・手術前日

①手術同意書の記載をし、提出します。※同意書がないと、手術は受けられません。

②手術の説明を受ける

手術前日に、処置はありません。
手術前日は、早めに就寝をして体を休ませましょう。

(入院2日目・手術当日)

①手術当日の朝食までは、食事可能です。それ以降は、水のみ可能。
 ※飲水時間が決められていることもあります。

②手術衣に着替えます。

③全身の観察をするので、メイクやマニュキアは手術前に落としましょう。

④貴金属類は、感染防止のため装着できません。手術前に外しましょう。
 ※メガネやコンタクトレンズも外して下さい。

⑤手術の2時間前には、子宮の入り口を拡張するための医療器具(ラミナリア)を挿入します。

⑥膣から陣痛促進剤を挿入して、人工的に陣痛を起します。
 ※自然なお産を促し、胎児の娩出を行います。

手術後、2時間程度は、ベッド上にて安静となります。その後、食事やトイレ歩行が可能となります。

シャワー浴は、翌日の診察後に許可が出ると可能です。

(入院3日目・退院日)

・診察後、異常がなければ退院となり、シャワー浴が可能となります。

手術後の注意点

・手術をして退院後から、通常通りの食事や活動、シャワー浴などができます。不規則な生活や暴飲暴食、激しい運動、入浴は避けて下さい。

・出血量が多いことや、発熱、気分不快など、何か心配なことがありましたら、手術を受けた医療機関へ連絡をして相談しましょう。

・手術から約1週間後に検診を行います。手術後に異常がないかの診察をしますので、受診しましょう。その後も医師の指示のもとに、受診しましょう。

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一般的な、中絶手術の一般的な流れについて紹介しました。もちろん医療機関によっては、異なる点もあります。

手術の痛みについて

手術中、麻酔を使用している場合は、痛みはほとんどありません。

手術後、麻酔の効果が消失してくると、痛みが生じる場合もありますが、痛みが出ない場合の方が多いです。

ただ痛みの出現や程度は個人差がありますので、必要時は痛み止めをもらってください。

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手術後の痛みは、子宮が元の大きさに戻ろうと縮む作用から起こります。
痛みの出現は一時的であり、子宮の大きさが元に戻ると痛みは消失します。

人工死産の費用について

人工死産は出産と同じく自費です。

ただ、人工死産の費用は、地域や妊娠週数によって違いがあるにせよ、出産一時金が使えますので、経済的な負担は大きくはないといえます。

出産育児一時金は多くの場合、医療機関と保険機関(国保や社保などの健康保険)が直接支払制度の方法をとっているので、費用の準備すらしなくてもいいケースもあります。

直接支払制度の方法をとっていない時や直接払いの申請をしていない場合などは、一度費用を立て替えたのち、加入している健康保険(国保や社保)に申請して1~2か月後に、出産一時金を受け取ることもできます。

火葬が必要

妊娠12週以降の死産・人工死産は基本的には火葬をします。

ほとんどの場合7日以内に死産証明を住所地、あるいは医療機関の所在地の市区町村役所に死産届けて火葬しなければなりません。

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人工死産は、非常に大きな精神的ダメージを負います。

そんな時一番ダメな行為として、一人で抱えこむことです。

そこで、あまりにも辛いときは、ひとり(夫婦)だけで解決するのではなく、誰かに相談や話を聞いてもらいましょう。

①臨床心理士やメンタルクリニックに行く

自分の気持ちに整理がつかないこともあると思います。

その場合は、臨床心理士からカウンセリングを受ける、もしくはメンタルクリニックに行くことが挙げられます。

専門家のもとカウンセリングを受けることで、自分の気持ちを吐き出し、気持ちが整理されるでしょう。

またメンタルクリニックでは、自分の状態に合った治療してくれたり、対処法を知ることができます。

②供養してもらう

胎児の冥福を祈るために水子供養をするという方法です。

近年水子供養に力をいれているお寺もありますので、事前に予約をいれていくとよいでしょう。

最後に 

今回は、人工死産を選択したとき、事前に知っておきたい情報を紹介しました。

大切な命を失うことは、悲しく辛い出来事だと思います。

しかし、人工死産を仕方なく選択している方は、あなただけではありません。

けして自分を責めずに受け止めていただければと思います。