・突然お母さんのおなかにいることができなくなって緊急の帝王切開で出産する赤ちゃん
・おなかの中にいる時から何らかの「異常」が見つかり、出生後はNICUに入院が決まっている赤ちゃん
このような出産は、決して少なくありません。
しかしこのような場合、お母さんは
「わが子を10ヶ月の間おなかの中で育てられなかったこと」や
「一緒に退院できなかったこと」、
「これから我が子は無事に成長できるのか」
など、不安な気持ちや罪悪感を感じる方がいます。
しかし、罪悪感を感じたり、自分を責める必要は全くありません。
現在の医学や治療はとても進歩していて、出生体重が300g台や在胎週数が22週の新生児も救命される時代になりました。
個々の重症度や疾病にもよりますが、ほとんどの赤ちゃんが急性期を脱して退院出来るまでに成長して、無事に自宅に帰ることが出来ると考えられます。
そこで今回NICUについての知っておきたい正しい知識をお伝えします。
NICUとは
NICUでは早産や低出生体重児、循環器疾患や呼吸器疾患、外科疾患、染色体異常、先天奇形などそのほかにも様々な疾病あり、集中治療を要している新生児の治療をしています。
NICUでは早産児や低出生体重児、心疾患や呼吸器疾患、外科疾患がある場合に入院の適応になります。
NICUが全国に広まった結果、多く赤ちゃんが救うことができるようになり、世界でも新生児が死亡する確率が格段に減少しました。けき施設ですので、医師や看護師は全力で赤ちゃん
多くの赤ちゃんが元気に(障がい等なく)退院できますが、そこにはリスクも存在します。
早産児や低出生体重の場合
特に32週頃までは肺の機能が未熟なことが多く、呼吸が上手に出来ずに酸素をうまく取り込めなかったり、少しだけ呼吸をとめてしまうこともあります。
場合によっては、保育器の中に酸素を流したり、人工呼吸器を装着したり、呼吸を助ける薬を使用することがあります。
呼吸の状態や心臓の動きや血圧が安定してから口から胃に入れたチューブを通して少しずつ母乳やミルクを始めます。
呼吸が上手にできていないと母乳やミルクが負担になってしまうことがあるからです。
少しずつ赤ちゃんの状態に合わせながら進めていき、酸素や人工呼吸器が必要なくなったら自分の口から哺乳瓶で飲む練習が始まります。
最初は誰でも飲むのが難しかったりします。哺乳瓶の乳首の形や硬さを変えて色々試してみたり、赤ちゃんに合わせながら飲む練習をしていきます。
体温のコントロールも出来て、呼吸も安定し、体重も増えてきて自分で上手に哺乳瓶から飲めるようになったらいよいよ保育器から卒業して赤ちゃんベッドに移ります。
その後、お風呂に入ったり、ミルクを飲んだり、体重を増やして自宅に帰る準備をしていきます。
この頃には、ご両親も母乳やミルクをあげる練習や、お風呂に入れる練習をします。
病院によっても異なりますが、全身状態が安定していて自分の口からミルクが飲めること(胃まで通したチューブを入れたまま飲むこともあります)体重が2300gくらいになると退院することが多いです。
予定日をこえてこのような条件を満たしているのであれば退院の目安と考えていいでしょう。
退院の目安 |
・予定日を超えるか正期産である37週以上であること ・全身状態が安定して、特に呼吸が自分で問題なく出来る状態になること。 ・ミルクを自力で飲める ・体重は2300g前後を基準としている病院が多い |
NICUに子供が入院したら知っておきたいこと
失明や視力障害が起こる可能性
眼球の血管が正常に発達しないことによって未熟児網膜症を発症することがあります。
網膜の血管は網膜と眼球をくっつけている働きをしています。36週頃までにほぼ完成しますが、全て完成するまでには40週を要します。
また、出生前後に酸素が不足していたり、血圧が低いことが影響することもあります。
特に早産児や超低出生体重児は、出生後に酸素投与を必要とする場合が多く、その影響から網膜の血管が異常に増殖してしまいます。そのため、失明や視力障害のリスクが上がります。
急性期を脱出して全身状態が落ち着いたら眼底検査が行われることが多いです。
発達障害などのリスク
お腹にいた期間が短かかったり、体重が少なく生まれた場合は精神発達遅滞リスクが上がります。
早産児や未熟児では小学校就学前まで(その後もフォローアップする場合もあり)発達外来で診察をうけることになります。
ほとんどの場合、正常な成長発達をすることが多いですが、正期産児に比べると発達障害の割合は高くなります。
一般の乳児に比べて脳性麻痺の割合が高い
僅かですが後遺症を抱えて生きていく子どももいます。
一般の乳児に比べて脳性麻痺になる確率が上がります。
分娩中や出生後の酸素が不足したことや、感染症にかかることで脳に障害が残ることがあります。
特にお腹の中にいた期間が短かった場合や1500g未満の未熟児では確率があがりますが、ほとんどの場合は死亡することなく大人になることができます。
心疾患などを合併する場合がある
早産や未熟児では心疾患を合併する可能性が高くなります。
未熟児動脈管開存症※という疾患があり、早産や未熟児でよくみられます。
薬を使って治療をしたり、場合によっては手術することもあります。
※動脈管開存症とは
赤ちゃんがお母さんのおなかのなか(子宮)で生きていくために必要な「血管」が、生後自分で肺で呼吸するため、本来なら生後2日以内に閉じますが、それが開いている状態です。
これにより、肺にいく血流が増え、全身をめぐる血流が少なくなって循環不全を起こして、程度にもよりますが心不全を起こします。
NICUに入院した親が出来ること
できるだけ会いにいく
早産で出産しなければいけなくなったお母さんは
「あの時のあの感じが異常だと感じていたらよかった」
「お腹の中で大きく育ててあげることが出来なかった」など、
多かれ少なかれ、「後悔」や「申し訳なさ」を感じています。
しかし、誰が悪いわけでもないのです。
沢山の点滴やチューブにつながっていて、医療機器に囲まれていたり、みずみずしく小さなからだをみると赤ちゃんが怖いと感じるかもしれません。
それは当たり前の感情です。
赤ちゃんは必死に生きようと小さなからだで頑張っています。
上手に呼吸をしようとしたり、頑張って母乳を飲もうとしています。
時には呼吸を助けるチューブを入れたり、採血をしたり痛い治療もあるかもしれません。
お母さんの体調が良くなって時間の余裕ができたら、たくさん会いにいってあげましょう。
たくさん話しかける
早く出てきて入院して治療することになった赤ちゃんに、お腹の中にいた時と同じようにたくさん話しかけてください。
周りには沢山の赤ちゃんと看護師や医師がいますが、お母さんたちのそばを離れて寂しいはずです。
耳はしっかり聴こえていますし、今までもお腹の中でご両親の声を聞いていたので声を聞くことで安心するでしょう。
面会時間にご両親に話しかけてもらって安心するのかずっと眠り続けている子、バタバタと手足を激しく動かしたり、目を開けたりする子など、たくさんの反応する赤ちゃんがいます。
そして手を握ってそっと撫でてあげることでご両親の温もりを感じます。
それはご両親である、お二人がするからこそ安心するのです。
愛情を注いであげる
赤ちゃんの全身状態が安定してきたら、オムツを変えたりミルクをあげたりと、直接赤ちゃんのお世話ができるようになります。
お母さんであれば母乳をNICUに届けて飲ませてあげたり、直接母乳をあげることもあります。お父さんも同じように哺乳瓶から母乳やミルクをあげられます。
治療や成長を待つためにNICUに入院にすることになったと思いますが、ほとんどの赤ちゃんは元気に退院していきます。
少しだけお二人に早く会いたくて出てきたのかもしれません。
普通ならまだ会うことができない時期にわが子に会えたのです。
お腹の中にいた時と同じようにたくさんの愛情を注いであげてくださいね。
最後に
NICUに入院すると聞いた場合、多くの両親は不安に思うものです。
しかし、お母さんのおなかの中にいたら、生きることができなかったかもしれません。
また早産として産まれてきた、NICUで育ったからこそ、救われる命も多くあります。
とはいっても、お母さんお父さんは、あまり無理をしないように気を付けてください。
辛い時は頑張りすぎず、医師や助産師、看護師、信頼できる友人などに気持ちを話してみるとよいでしょう。
もちろん、ご夫婦で話をするのもいいと思います。
一人で抱え込みすぎるようなことは避け、不安な気持ちを相談する勇気も必要です。